深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





この足音はたぶん芦谷さんなんだろう。
何でだかはわからないけど、なんとなくわかってしまうんだ。


…彼の一言で、こんなになってしまっているのに。






「―――侑!何してんだよ」


抑えつつも強い口調でそうユウさんを問いただそうとする芦谷さんに、私は顔を上げて制止した。



「ユウさんは何もしてません。…目にゴミが入っただけですから」


私はそう言うとぎこちなく笑いながら一礼し、その場を後にする。
近くにあったトイレに駆け込んで、その隅にうずくまってさらに泣いた。


…何がそんなに悲しいのか、よくわからないままに。





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