あなただけを愛したい
.



「…んな……かんな…」



遠くで声が聞こえる。


誰かがあたしの体を揺さぶっている。



「……ん……だれ…?」



重い瞼をゆっくりと開けた。



「やっ、ちゃん?」



あっ、そうか……


あたし、やっちゃんちにいたんだった。


茜さんに言われたことをずっと考えていて……


いつの間にか、そのまま寝ちゃったんだ。



「ひでー顔」



わかってる。


この瞼の重さは、眠いからじゃない。


泣きすぎたからだ。



「ほら、顔洗ってこいよ。準備したら行くぞ」


「え、どこに?」


「おまえなぁ、彼氏んとこに行くって言ってあっただろ?」



あ……


そうだった。
< 306 / 453 >

この作品をシェア

pagetop