あなただけを愛したい
しばらくはお互いに無言で、ずっと夜景を見ていた。


突然、周りの空気がふわっと動いたのを感じたと思ったら、竜一がそっと肩を抱いてきた。



「これぐらいならいいだろ?」



見上げた先の竜一の表情は、どこか自信なさげで、瞳がゆらゆらと揺れていて……


あまりの切ない表情に、振り払うことができなかった。


でも実際、あたしも、観覧車の中でもこの温もりに安心していたのは確かで、今もこうされることで心が安らぐのを感じていた。


竜一の言葉を肯定するように、そのまま肩に頭を預けた。


その瞬間、竜一の腕に力がこもり、さらに引き寄せられた。



「早く、俺の方を見ろよな?」


「……そうだね」



そうなれたら、どんなにいいだろう。
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