あなただけを愛したい
目の前に立っている、名前すら覚えていない男性は、強引にあたしの腕をつかんで歩き始めた。



「ちょっ、離して下さい!」



腕を振り払おうとしても、まったく力が入らない。


アルコールのせいだ。


どうしよう……


あたし、このまま……


連れていかれるの?


ヤダよっ。


誰か助けてっ!


あたしの腕をつかんだまま店を出たこの人は、大通りでタクシーを拾おうとしている。


ヤバいよ。


タクシーなんかに乗っちゃったら、もう終わりだよ。


誰か……


助けてっ……


でもそれに反して、アルコールが身体中を回り始めて、さっきよりもフラフラしてきた。


それに頭がクラクラする。



「…なして…」



そう言って、腕を振り払おうとしても、まったく動かない。
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