愛★ヴォイス
開演を知らせるチャイムが鳴って、場内が徐々に暗くなる。



そして


パッと照らされたスポットライトの先には――

――…

――――……


「…ブッ☆」

思わず笑いが漏れたが、私の笑いなど気にならない程、場内は爆笑の渦に巻き込まれた。

それもそのはず。


「ちょっとシンデレラ!窓の桟にホコリが残っててよッ!」


確かに女装するとは聞いていたけれど。


そこには美少女戦士さながらの金髪ツインテールに赤メガネ、更には超ひらひらミニドレスを身に纏った桐原さんが、正々堂々仁王立ちしていた。

どうやっても隠せないその長身と、スカートのしたから覗くゴツゴツとした細身の関節とが、衣装とまったく咬み合っておらず、場内の笑いはクスクスと尾を引いている。

その後次々と現れるシンデレラのお姉様も継母も、更にはシンデレラまでもが、全員男性。

やっと出てきた王子様が女性という、性別逆転劇で、挙句に魔女(これも男性)に連れ去られた王子を助けるためにシンデレラ一家が悪と戦うという、奇想天外なストーリーだった。

そうして場内を終始爆笑に包んだまま、惜しまれつつ舞台は終了した。


(あー、面白かった!)


普段より数段高いキーだけど、やはり桐原さんの声は別格に好みで、生声が耳に届くたびドキドキしてしまう。
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