愛★ヴォイス
「今日はよろしくね、三田くん」

まんざらではない様子で部長もエスコートされている。

相変わらずどんなツテを使って今回の合コンがセッティングされたのか見当もつかない。

同じことを思ったのか、前を歩いていたレナが振り向きざま肩をすくめてみせて、思わず笑い返した。



中に入ると、いかにもといった奥の個室に通され、そしてその扉の先にはーー

ずらり、と育ちの良さそうなスーツ男子が立って出迎えてくれた。

三田と呼ばれた部長のエスコート役の男の子と、少し先輩と思われる、落ち着いた雰囲気の男性たち。

これで高収入ならば、俗に言う“当たり”のセッティングである。

しかし

(ん?)

よく見ると一番手前の男の子だけ、ジャケットこそ申し訳程度に羽織っているものの、中のシャツはくたっとしていて、更にジーンズというラフな格好だった。

(なるほど、この子が私と同じ追加された7人目・ね)

ひょろりと背は高いが、猫背気味で手足が長い。

そこに黒のセルフレーム眼鏡だなんて、絵に描いたような草食系男子だ。

ちらりと目をあげた瞬間に目が合うと、ぺこりと相手が頭を下げたので、こちらも慌てて会釈を返した。

じろじろと一方的に観察していたのが伝わってしまった気がして、申し訳ない気持ちになる。


(ーーでもどこかで……?)
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