罪語りて所在の月を見る


罪悪感。
あの人をああしたのは“僕だ”と思いつつも渉はそれ以上に、あの日あの時あの事を、心のどこかで『ホッとした』と思ったことの方が――


「……、詭弁だ」


どうしようもないこじつけだと、『僕はそこまで罪滅ぼしをしていない』と、渉は手帳のページを捲った。


春夏秋冬手記。渉の姓、春夏秋冬(ひととせ)を与えたその黒い手帳は、渉が今まで出会い試し調べた都市伝説が事細かに記入されていた。


口裂け女やメリーさん、そうして今さっきのページは『くねくね』だ。くねくねを“理解したもの”は狂うとあるが、きっとその文で、ついついあの日を思い出したのだろうと渉は、煮え切らない想いを飲み下した。


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