罪語りて所在の月を見る
罪悪感――自分の罪だと渉は思っているが、もう“取り返しがつかないこと”だ。罪滅ぼしだなんてできないし、やれることなど渉にはなく、どうしようもない。
罪滅ぼしをするなら悪いことしたと牢獄に入るのが一番手っ取り早いが、法律で裁けるものでもないし、命で償おうにも渉は死ねない。
飛び降りだろうが、火の手に身を投げようが、どれにしても必ず“傷ひとつ負わない結果となる”。
自殺すらもできない自身に罪滅ぼしなんかできなかった。アレがほんの些細なことならば謝って済むが、何せ大きすぎた。更には、謝られていることも“あの人”は理解できない。
自身で感じる罪悪感ほど、生易しい罪はない。僕が悪いと渉が苦悩したところで、被害者にしてみれば粗末なものだろう。