蒼幻の天使~A Solitary Flower
わたしたちはまだ入り口に入ったばかりで、彼の所まではこんなにも距離があるのに。

こんな……光のような存在をわたしは初めて見た。

入り口から差し込む月光は、彼だけを照らしているのかと錯覚してしまうほどに。




彼は………永遠をまとう彫刻のようだった。




深海のように揺れる蒼の瞳が、わたしを見つめていた。

かすかに開かれる唇が何かを言いたげで。

だけど彼は、笑顔とも泣き顔ともつかない表情を浮かべた。



「いずみさん…彼が…ママの愛した“瑞樹”なんだね…?」

いずみさんは、わたしの腕をぎゅっと握ることでそれに答えた。

わたしの頬を流れる涙は、彼に見えているだろうか……?

ママ……わたし、おかしいの。

ママの心をずっとパパとわたしから奪っていた“彼”が憎かったはずなのに。

彼がひょっとしたらわたしたち家族の幸せを奪っていってしまうんじゃないかって思ってたのに――――!!!







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