蒼幻の天使~A Solitary Flower
「美月、美月!!」

「う、ん……」

誰?

私の名を呼ぶ声。

「こら、美月!起きなさい!!」

いきなりトーンの高くなったその声に、私は無理やり夢から連れ戻され、飛び起きた。

夢…だったのかぁ。

もう少しで彼の顔が見られたのに……。

そう思うと腹立たしくなり、目の前で布団を持ち上げて仁王立ちしているママに向かって叫ぶ。

「もう!起こさないでよ!いいところだったのに~!」

そう叫んだ瞬間、目の前が真っ暗になったと思うと、顔が柔らかい感触で覆われた。

ポサっと私の顔の下に落ちたピンクのクッションを見て、寝ぼけていた私はやっと、クッションを顔に投げつけられたことに気づく。

「何言ってるの!これ以上寝てたら遅刻でしょ!?ほんとに、美月は朝に弱いんだから」

ママは「早く顔洗いなさい」と言うと、足早に階段を降りて行った。

ちょっと気が強いけど、優しいママ。

喧嘩はしょっちゅうだけど、私はママが大好きだ。

「でも、顔にクッションはないよなぁ…」

お気に入りのピンクのベッドから降りて、目覚まし時計で時間を確認する。

「ほんとだ!遅刻しちゃう!」

起こしてくれたママにちょっぴり感謝しながら、家の中をバタバタと走り回る。

顔を洗い、髪も梳かし、歯も磨いて、まだ新しい匂いのする制服に袖を通す。




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