蒼幻の天使~A Solitary Flower

幻と実体

教室の入り口に立ち止まって中を見渡す。

いつもより少し早く来た朝の教室は賑やかなクラスメートの笑い声が響いていて、爽やかな朝の日差しが窓から差し込んでいた。

沙希が来ているのか気になって沙希の席を一番に探す。

沙希はそこに座っていた。

まだ来たばかりのようで、カバンから教科書を取り出しながら横に立っている舞と会話していた。

話さなきゃという焦った気持ちでいっぱいになりながら沙希の席へと近づいた。

「沙希、おはよ!」

緊張でいっぱいになりながらも、思い切って笑顔で後ろから声をかけた。

沙希は舞との会話をピタリとやめると、私の方を振り向いた。

無表情で私の顔をじっと見つめる沙希。

「沙希、昨日は…」

言いかけた私の言葉を遮るように沙希が口を開いた。

「おはよう。今、舞と話してたんだけど、またこの前の遊園地に行かない?」

沙希は話しながら楽しそうに笑った。

私のこと、怒ってないの…?

不安な気持ちのまま沙希に問いかけた。

「いいけど。3人で?」

「そうだよ!だって楽しかったでしょ、この間。だから今度は女同士で行こうよ!」

沙希の笑顔は嘘ではないように思えた。

いつもの彼女の笑顔だった。

「うん!」

私達は次の日曜日にまたあの遊園地で遊ぶ約束をした。

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