蒼幻の天使~A Solitary Flower
「決まりね。では、美月。あなたに、『月の一族』の歴史を見せるとしましょうか」

唐突に言い放ったいずみさんの意味ありげな言葉に、わたしとセイジュは驚いて顔を見合わせた。

いずみさんが三日月のペンダントを握り締めると、蒼の雨のような光がいずみさんに降り注いだ。

「いずみさん…!!」

風に舞うように、いずみさんの漆黒の髪が揺れる。

光が眩しくて瞳を伏せたわたしの額に、いずみさんが両手をつけた。

「!?」

フゥウウォォオオン……!!

不思議な音が耳の周りを廻り、突如、わたしの頭の中に流れ始めた映像に、わたしはハッと瞳を見開いた。

「…こ、これ…」

幼いママとパパと……瑞樹という少年。

孤児院で育った3人とそれを見守るいずみさん。

炎に包まれる孤児院と、そこで死んでしまういずみさんと消えた「闇の天使」。

カインの一族に襲われたママを護って死んだパパ。

愛する瑞樹を護って死んだママ。

生まれ変わって宿命の対決をすることになった愛し合うカナンと十夜と瑞樹。

二人を愛してしまったママが、残酷だと涙を流す。

でも、瑞樹はママを「永遠」に月から見護ることを選んだ。

瑞樹に見護られて、幸せに暮らすママとパパと………わたし。

< 76 / 116 >

この作品をシェア

pagetop