レンタル彼氏 Ⅱ【完結】
あの後、泣きながら走って家まで帰宅した。


ただいまも言わず、走って部屋に閉じこもると何度も何度も唇を拭った。
赤くなるまで拭ってから、私はまた涙を流した。

伊織以外、もうキスしたいと思わなかったのに。


なのに。
何であんな奴。


悔しい悔しい悔しい!


何でもっと強引に拒絶しなかったんだろう。


油断してた。
完璧。

二度と聖に会いたくない。



ぼふっと枕に顔を埋める。


……………やっぱり。


私と伊織がまた出会うことなんて、あり得ないのかな。
まだ、こんなにも好きなのに。



相手がいないんだもん。
アタックも何もあったもんじゃない。


連絡先すら知らなくて、好きだなんて。
おかしいのかな。



皆、決まってそんな人諦めなって口を揃える。
和だけが頑張れって言ってくれた。


でも、幸せになるなら諦めた方がいいことを和は知ってる。
和が何も言わないのは、私を気持ちを思ってくれてるから。
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