レンタル彼氏 Ⅱ【完結】
「そう、これ。ありがとう」


私は財布をがっちしと掴んだ。

「じゃあ、行こうか。いずちゃん」


「……そのカバンさ」


「え?」


「聖の好きにしていーよ!」


「は?」


そう、言うと私は走りだした。
聖から逃げるために。


だけど、足の速さは聖の方が上で。


私は腕を掴まれた勢いで、そのまま思い切り聖と共に倒れこんでしまった。


「……………いっつ」


「……ててて、あ」



ばちっと至近距離で目が合う。
唇と唇がすぐにでも触れそうな距離。


私はすぐに聖を両手で弾いた。


「いったー!いずちゃん、いきなり酷いよ!」


「…どっちがだ!」


いきなり引っ張って。
いきなりキスして。


いきなり過ぎるのは、どっちだ!



歯を食い縛りながら聖を恨むように見る。
聖はそんな私を見て、目を真ん丸にした。


「…………………」



聖はふぅっと、息をつくと。


「……ごめん」


しょぼんとしたまま私に謝った。
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