ユビキリ。

そこから見える位置にある、

車が通る橋。



その橋の上に、

赤色灯がチカチカしている。




川にはレスキューの人達が入って、

何かを懸命に探していた。




知っていた。



何を探しているのか。



だって、

それをママに聞いたから

慌てて此処まで飛び出して来たのだから。



「なんで?」



私は呟いた。


派手な音をたてて電車が通り過ぎる。


「なんでよ。」


私はもう一度言った。




引き上げられた車に見覚えがあった。



「真奈。」


ママの声が私を呼んだ。


私は振り返らなかった。



「違うよ。絶対。翔は乗ってないよ。」



私の呟きに、

母親は言葉を探すように黙った。


結局、
いい言葉は見つからなかったのか、
柔らかくて温かい腕で
私の肩をそっと抱き寄せた。



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