ユビキリ。
3:翔の日。


河原は何も変わっていなかった。


あの頃と同じ。


ススキと雑草の合間に、
ゴミが散乱している。


あの頃は何なのかわかっていなかった、

使用済みのコンドームやらエッチな雑誌も

同じように捨てられている。


こんな場所で?なんて疑問までわいてくる。


そういう年齢になった。



あれから13年だ。

私は年末に、24歳になる。

13年、毎年ここに来ている。



頭上を電車が通り過ぎた。


その場所から、

私は花束を川に投げ込んだ。


花束はゆっくりと流れていく。



あの日以来、私はあの橋を渡っていない。

近付いてさえ、ない。



「今年も来たよ。翔。」



私の呟きは、

電車が通り過ぎる音で掻き消される。


涙は出ない。


私はまだ、信じてないから。


翔はあの車には乗ってなかった。


だって、

遺体はおばさんと妹のナナちゃんのしか見付からなかったんだ。


翔はまだ見つかってない。





だから、翔はまだ生きてるんだ。


何処かでまだ。





それが、
有り得ないことだと、
もう理解できる年齢なのだけれど。


理解なんてしたくない。


私はまだ。










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