再会~初恋のやり直し~
「マサのお母さん!」

「春菜ちゃん。」

春菜ちゃんが騒ぎを聞いて追いかけてきてくれた。何も話が出来ない私を見かねた彼女は突然自分のお母さん、愛さんのことを話し始めた。

「私ね、お父さんから聞いたことあるんだ。私のお母さんが好きだったのはお父さんじゃなかったんだよって。お母さんは三好のおじさんのことが好きだったんだって。お父さんはいつも三好のおじさんの尻拭いなんだって。三好のおじさんに振られたお母さんが、三好のおじさんの親友のお父さんと結婚したんだって。そうすれば、いつも三好のおじさんの近くにいられるから。お母さんは本当は三好のおじさんと結婚したかったんだって。」

「春菜ちゃんのお母さんが死んじゃったのって春菜ちゃんがまだ4歳ぐらいだよね?そんな子供にそんな話をしたの?」

「その話を聞いたのは私が8歳くらいだよ。そんな話をするお父さんをすごく恨んだわ。でも、お父さんの話が本当なら、お母さんにも腹がたった。お父さんは三好のおじさんの身代わりなんてひどいって。8歳の私はひとりで悩み続けた。」

8歳の女の子には重過ぎる話だ。

「でもね、飲み屋のかすみさんってお母さんの親友だったんだけど、かすみさんが言ってくれたの。」

「なんて?」

「子供のころお母さんが三好のおじさんを好きだったのは本当。ちなみにお父さんを好きだったのはかすみさんなんだって。私笑っちゃった。だってかすみさんところのご夫婦ってすごく仲良しじゃない?だから、子供の頃の好きとか嫌いなんて大したことないのよって。でね、お母さんはいつも言ってたんだって。お父さんと結婚して良かったって。だってお父さんと結婚してなければ私は生まれてこなかったって。今は春菜がいない生活なんて考えられない。今はとても幸せだ。この世で一番愛しているのは家族だって。」

「そうかもしれないわね。」

「かすみさんは私達を本当の子供のようにかわいがってくれた。相談にもいっぱい乗ってくれるからすごく感謝してる。でもねこの話を聞いた当時は、なんかピンとこなかった。私も小さかったし。でも自分が初恋を経験して、人を愛したり、愛されたり、傷ついたり、傷つけたりしていくうちになんとなくお母さんの気持ちがわかったような気がしたんだ。一応、同じ女だからね。多分お母さんがこの世で一番愛していたのはお父さんであり私であり、生まれてくる秋人と秋義だったんだって。」

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