みるくとりんご[短編]
私は千葉を引っ張って教室に向かった。
『どこいくの?』なんていう千葉の言葉には気づかないフリをする。
教室はちょうど自習中で、騒がしかったけど、私たちの姿を見た途端、静かになった。
私は構わずに、教卓の前に立って息を吸った。






みるくとりん【ご】



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「私の名前は荒谷沙織です。
ちなみにバツイチです。十六歳になるなり籍入れたけど、結局捨てられちゃいました。悲しかったけど、少しほっとした自分が嫌で、ずっと自分が嫌いでした。
そして今でも自分が嫌いです。
だから、将来結婚するときは、もっと私をそばにつかせてくれる人と結婚するつもりです。
よろしく」





クラス内は少しざわついていた。


本当の友達になるには、お互いのすべてを知らなきゃいけないなんて、そんな横暴なもん信じちゃいないけど、私はみんなに私を知ってもらいたいと思う。


その上で私と仲良くしてくれる人がいたならば、きっともう壊れることはない。






そしてコイツ。



私の隣にいるこの男は、きっと『伝える』という行為が足りなさすぎる。
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