みるくとりんご[短編]
あの日、私はいつものように友達と早弁をしていた。


たあいない話で盛り上がってる最中に、手が滑って箸を落とした私。


それを拾ったのが、『ナルシスト』(立花)だった。


私の箸を拾った立花は、いつものように胸くそ悪い笑みを浮かべて、



「返して欲しい?」


なんてことを聞きやがる。



私は『死ねナルシストっ』なんて心の中で毒づきながらも、取り合えずば平常心を保っていた。



「まあ、返してほしいかな。弁当食べれないし」



「どーすっかなー」



ふざけんなナルシ。誰もてめーに箸拾ってなんて頼んでねぇーだろ。勝手にお節介しといて何クソみたいなこと言ってんじゃボケ。


「キスしてくれたら返してやるよ」



はい! これ! このセリフ!
こーゆーこと言う奴が、一番大っっっ嫌いなんだよね。ムシズが走るわ。



「あー……じゃあ、いらないわ」



「は?」



すっげーマヌケな顔の立花。



おおかた、顔真っ赤にして『無理だよー』だとか、ほっぺにキスされる展開でも予想してたんだろう。




「だって、あんたにキスするとか気持ち悪いし」




無理無理。そんなん絶対出来ないもんね。

そう言って私は、売店に割り箸を貰いに教室を出た。


ちらりと振り返ると、呆然と私の箸を持つ立花の姿。



そんなアホみたいな姿はなかなかに面白いんだけど、その日から私は、やたらと立花に絡まれるようになった。



なんでも、私は他の女と違うから、絶対に落としたいらしい。



正直、すんごくウザい。
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