愛のうた。
ただぼろり、ぼろりと
雨のようにノゾム君のシャツを濡らした。

温かい温もりに包まれて、
まるでシュンがそう言ってるみたいで。

ごめんね、こんなとこ見られちゃ
ナナもシュンも悲しむよね。


だけど…ノゾム君の温もりを貸してください。




ノゾム君はきつく、きつく私を抱きしめてくれた。


「泣くな…沙知ちゃんには笑顔が似合うんだよ。
俺、ずっと沙知ちゃんのこと見てた。
シュンになれたらって願ってた。」

「…ノゾム君」

「好きだったんだ。
でも沙知ちゃんにはシュンがいて、
俺にはナナがいる。
…無理ってわかってた、でも好きだったんだ」

「…っノゾム…君」



そうだったんだね。
ごめん、全く気がつかなかった。
私はシュンしか見てなかった。


「今だけでもいい。
もう、リセットしよう?
お互い、生まれ変わるんだ」


私もノゾム君を抱きしめ返す。



ありがとう、ノゾム君。
君はいつだって私を助けてくれた。
ハルカのときも、
シュンのときも、
…今も。


私の命を助けてくれた恩人だよ。


ありがとう。ほんとにありがとう。


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