志緒少々

「とにかくあなた、怪しいのでもう一度名前を教えて下さい」

「新日本債券の井上です」

「下のお名前は?」

「竜二です」

「それ、本名じゃないでしょう?」

こういうのって、絶対偽名を使ってるはず。

「本名です」

って言うだろうけど、井上さん(偽名)はちょっとうろたえてきました。

「そもそも新日本債券って会社、実在しないんじゃないですか?」

「実在しますよ」

「だって井上さん、携帯からかけてきてますよね?」

「出先なので」

「それにしては静かじゃないですか」

「そうですか?」

「まあいいや、御社の住所、どこです?」

「東京都港区、台場3丁目……」

その住所をメモりながら、私は笑ってしまいました。

< 276 / 684 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop