心恋ふ


横目で土方さんを見てから、
隊士達が騒いでいた話しを、そっくりそのまま伝えてみた。

案の定土方さんは訳が判らないという表情をし、眉間に皺を寄せた。


やっぱり土方さんの眉間には皺がないと駄目だよね

ふふっ、と静かに笑うと
土方さんの眉間に現れた皺を指で押してみた


だが、直ぐに僕の手を払い除け縁側に置いてある下駄で庭に出てしまった。

今日は何がなんでも怒らないし、
怒鳴らないみたいだね


普段土方さんの怒鳴り声を起こさせる物でも持ってこようと思ったが、
桜の花弁という特典付きの土方さんの背中は、昔より何倍も大きく感じられた。


あの頃より背負うものが大きくなったんだもんね……

あ、それでも

「だから土方さんはいくら機嫌が良くても少しは怒鳴ってくれないと僕に面倒事が回ってくるんだから……って、聞いてる?」

これだけは云わなければいけないから……

2度と男達に泣き付かれたくないし。


それでも土方さんは昔を思いで浸ってるのか、僕の方を見向きもしない。

少しは僕の話しを聞いてくれてもいいんじゃない?


無性に苛つき、
縁側に置いてある下駄を静かに履いて……

















「~~ッウ~~ッ! ……テメッ、何しやがんだ!!」



大きく感じられた背中に、飛び蹴りをいれてみた。
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