君が恋に落ちるまで。




暗いから、なのか
寒いから、なのか
悠也さんは掴んでいた
あたしの手ごとコートの
ポケットに突っ込んで、




そのおかげで距離が縮まった。




「 ・・・て、歩くんですか? 」




歩いて行き来できるような
距離ではあるけど、悠也さんなら
”車で送る”とか言いそう。




「 あぁ、これから奏多のところに
  行くからね 」


「 ・・・また飲むんですか? 」




”バーだからね”と笑う悠也さんが
立ち止まって、あたしも一緒に
立ち止まる。




悠也さんを見上げれば、
再度、心臓が飛び跳ねた。




「 一緒に行く? 」


「 えっ・・・・ 」


「 なんて、ね? 」




そう言って歩き出した悠也さんの
歩く速度はゆっくりで、会話もなく
マンションへ向かって歩いていた。





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