ヒコーキ雲に乗って
「陽介、就職決まったんやろ?就職課に何の用で来たん?」

我ながらかわいくない言い方だ。

陽介はゼミの中でも早い段階で、超一流商社に内定を貰っていた。

その事に対する嫉妬が少し入り混じったせいもあるが、何よりも久々に会う陽介が以前よりもぐっと大人っぽく、かっこよくなっている事に動揺した事が、私をひねくれた態度にさせてしまったのだと思う。


「内定貰った事、まだ就職課に報告してなかったからな。お前はどうや?」

「見ての通り、まだバリバリ就活中。」

そう言い放ち、パソコンの方に体を向き直した。

自分でもぞっとするぐらい冷たい声だった。

今、陽介がどんな表情をしているのか見るのが怖くてひたすらパソコンで検索するフリを続けた。



すると陽介はしばらく黙りこみ、やがて何も言わずにその場を離れた。

慌てて彼の背中を目で追う。

素直じゃない、かわいくない、ひねくれた自分に呆れたんではないかと急に不安になった。

呆れられても、嫌われても、もう彼女がいるんだから別に関係ないはずなのに。


どんどん遠ざかっていく陽介の背中を追いかけて、抱きつけたらどんなにいいだろう。

ここから大声で陽介の名前を呼んで「大好き」と伝えられたらどんなにいいだろう。

そんな私を大好きな人が優しい笑顔で受け入れてくれたらどんなにいいだろう。


そんな想いばかりが心を支配し、気付いたら涙がこぼれ落ちていた。

次々に流れてくる涙を拭おうともしない私を見て、周りにいる学生達は就職活動に息詰まって落ち込んでいると捉えているに違いないだろう。


だけど、今私が悲しいのは、今私が泣いているのは大好きな人に上手に自分の気持ちを伝えられないもどかしさのせいだ。

私をこんなにも悲しませる事が出来るのは、世界中で陽介ただ一人だ。


















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