三毛猫レクイエム。

「真子ちゃん、明良の願いを聞いてあげて」

 そのとき、呼び鈴がなった。おばさんははっとして、

「真子ちゃん、ちょっと待っててね」

 私から離れた。私は、泣きながら頷いた。
 しばらくして、おばさんがリビングに戻ってきたとき、おばさんは一人ではなかった。

 みゃあ

 猫の鳴き声に驚いて振り返れば、おばさんの隣にはヨシを抱いたヒロがいた。

「ヒロ……」
「真子さん……」

 お互い、気まずさから目をそらした。おばさんが微笑んで、ヒロに椅子を勧めた。

「ヨシ君の毛は、あとできちんと掃除しておくから気にしちゃ駄目よ」
「すみません、こいつ、何故か俺から離れなくて……」
「いいのよ」

 そう言ったきり、ヒロが黙ってしまう。すすり泣く私と、黙ってしまうヒロに、おばさんが苦笑した。

「もう、二人ともそんなに思いつめて。明良が見たら何事かと思うわよ」

 みゃあっ

 まるで返事をするように鳴くヨシ。おばさんは笑った。

「そうよね、ヨシ君もそう思うわよね」

 そう言って、ヨシを抱きかかえた。

「ヒロ君も、何か言いに来たんでしょう?」
「俺は……」

 おばさんは目を細めた。

「ヒロ君、明良の親友だった貴方なら、明良の気持ちをわかってくれるでしょう」

 おばさんの言葉に、ヒロは目を伏せた。そして沈痛な面持ちで、口を開いた。

「本当は、最初から思ってたんだ。俺が真子さんに近づくことを、タキが快く思わないんじゃないかって……」
「……っ」

 私は、再び嗚咽を漏らす。
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