三毛猫レクイエム。

「?」

 私が首を傾げると、ヒロが歌い始めた。

♪ 君の涙は枯れただろうか
  君は笑顔を取り戻しただろうか
  いつまでも笑っていて欲しい
  俺の最愛のマリア

「あ……」

 それは、あきがヒロに託した歌詞だった。

♪ 君を想うと胸が痛む
  君を求めてやまない俺の魂
  引き裂かれそうな痛みにも
  俺は君を想うのをやめない

 いつの間に、作曲したんだろう。歌詞にぴったりのそのメロディーに、私は顔をほころばせる。
 私は、その曲に聴き入っていた。今を逃したら二度と聴けないかもしれない歌だから。

♪ 一度は残酷だと呪った運命だが
  今はそうは思わない
  君と出会えたことがまさに
  運命だったのだから

 あき、私は運命だったと思ってる。
 あきと出会えたことも、何もかも。
 あきに出会えて、私は幸せだったよ。

♪ 君はマリア、俺の最愛の人

 あき、私の最愛の人。

♪ 俺は君をおいていくが
  どうか忘れないでいて
  俺が君を愛したことを
  君が俺を愛したことを
  心の隅において、そして笑っていて欲しい

 一生、忘れたりなんかしない。
 貴方がくれた愛を、私が捧げた愛を。
 一生忘れない。

♪ 涙が枯れたとき
  それは前に進むとき
  俺は君を捕らえはしない
  大空へ羽ばたいて

 あきのことを思って泣かないというのは、約束できないけど、でも、前に進むって約束するよ。
 私はあきのせいで立ち止まったりしないから、だから安心して。
 あきのおかげで、強くなれたから。

♪ 二つの翼で羽ばたいて
  そして明星にその笑顔を見せてくれ

 ヒロ、これからよろしくお願いします。
 あき、私の笑顔を、ずっと見守っていてね。





fin
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