三毛猫レクイエム。


 TAKIがいなければ、“Cat‘s Tail”は成立しない。だから、解散する。

 あきが死んだしばらく後、ギターのYUKI、ベースのHIRO、ドラムのTETSUがそう口をそろえた。
 TAKIがあってこその“Cat‘s Tail”だからって。四人いなきゃ意味がないからって。
 だから、現在“Cat‘s Tail”は存在しない。


「子猫だったこいつのこと拾ったの、タキなんだよ」
「え?」

 思いがけない言葉に、私は呆けた声を出した。

「俺とタキは高校で同じ部活の先輩と後輩だったんだけどさ、あ、タキが先輩な。偶然大学も一緒でさ、かなり仲良かったんだ。俺は、親友だと思ってる」

 ヒロの言葉に、私は敏感に悟った。ヒロは、あきのことを忘れていない。

「あいつ動物好きで拾ったはいいけど、アパートがペット禁止とか言い出してさ。実家は、おじさんが猫アレルギーだとか言うし。それならって、俺が引き取ったんだ」

 あきの家族のことも知っているような口ぶりのヒロ。それだけ、あきとヒロは仲が良かったのかもしれない。
 どうして、あきは私にそのことを言わなかったんだろう。

 そして、気になったことがひとつ。


「もしかして……」
「うん?」
「名前、ヨシって……」

 私の言葉に、ヒロは笑って頷いた。

「あいつがつけたんだよ、自分の名前からとって」

 その言葉を聞いた瞬間、雷に打たれたような、そんな衝撃を覚えた。



第二章 忘れられない、男



「たまに練習とかにも連れてきてたし、タキの方がヨシに懐いてたみたいだけどな」
「ふふっ、あきならやりそう」

 ヒロの言葉で、あきがヨシにじゃれる姿を想像してしまい、私は吹いた。笑った私を、ヒロが少し驚いたように見た。

「どうしたの?」
「いや、正直、タキの話をしたら、真子さん泣いちゃうんじゃないかと思って。軽率だったかな、と」

 私は微笑んで、

「もう、一年経ったんだね」

 と呟いた。ヒロは一瞬真顔になって、

「もう、タキのことは乗り越えたってこと?」

 私は、その言葉に首を横に振った。
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