三毛猫レクイエム。

「真子姉に未練残しまくって、自縛霊とかになってたらどうしよう!」
「そんな怖いこと言わないでよ」

 そんな冗談を言えてしまう明菜ちゃんは、私なんかよりずっとずっと強い。


 一年前、葬儀の席で私は明菜ちゃんの泣き顔しか見れなかった。涙をこらえているおばさんとおじさん、そして明仁さんと一緒に並んで、人目をはばからず泣いていた明菜ちゃん。
 私は明菜ちゃんの笑顔を見て、少し安心した。


「早く行こうよ、お母さんもきっと喜ぶから」

 明菜ちゃんの勢いに手を引かれて、一年ぶりとなるあきの実家にやってきた。

「ただいま!」
「明菜? 貴女もうすぐ大学生なんだから、少しは落ち着きなさい」

 元気いっぱいの明菜ちゃんの声に、奥から一年ぶりとなるおばさんの声が聞こえる。

「お母さんっ、真子姉来てるよ!」
「あら」

 スリッパの音がして、おばさんが顔を出した。あきは母親似だから、おばさんとあきはそっくり。明菜ちゃんは目元と口元が似てるけど、おばさんとあきは本当にそっくりなんだ。

「真子ちゃんっ、久しぶりね」
「お久しぶりです」

 その同じ笑顔を見ると、心が泣きそうになった。

「明良に会いに来たの? さ、入って」

 玄関先で、おばさんに手を引かれる。靴を脱ぎながら、隅においてあったダンボールが目に入った。明菜ちゃんもそれに気づいたのか、

「あれ、また届いたの?」
「ええ。あとで部屋に運んでおくわ」

 私が首をかしげると、おばさんが微笑んだ。

「明良のファンがね、今でも事務所にファンレターを送ってくれるらしいの。プレゼントとかもね。いつもそれをわざわざ丁寧に送ってくださるのよ」

 明菜ちゃんが笑って、

「二人ともお兄ちゃんのところに行っておいでよ。私がこれ部屋に運んでおくから」

 ダンボールを抱えあげた。
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