三毛猫レクイエム。


 首を横に振った私に、先輩はそっとため息をついた。

「姫木ちゃん、もう、一年経ったんだよ」
「……はい」
「勘違いしないでね、責めてるわけじゃないから。でも、そろそろ、前を向かなきゃ」

 わかっている。先輩も、
 私を心配しているって。

「心配かけて、ごめんなさい」
「ううん、私こそ余計なこと言ってごめんね。でも、姫木ちゃん、今にも死神に連れて行かれそうな顔してるときがあるから……」

 私は笑顔を作って、

「先輩、私、大丈夫ですから」
「でも……」
「本当に、大丈夫です」

 頑固に言い切る私に、先輩は苦笑した。

「わかった。でも、本当に新しい人探したくなったら、私に相談しなさいよ?」
「はい。でも、先輩は自分のを探すのが先でしょう?」
「あっ、こら、そんなこと言うのはこの口か!」

 そう言って私の頬をつねる先輩に、私は笑った。

「先輩、いつも私のこと考えてくれて、ありがとうございます。今度、そういうの抜きで、飲みに行きましょう」
「わかった。約束だからね」

 山里先輩と二人がかりで在庫を確認して、帳簿を確認していた木島さんと、最終確認をする。

「それじゃあ、お疲れ様でした」
「お疲れ」

 戸締りをして、私達はショップをあとにした。

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