三毛猫レクイエム。

 そっとソファに座って、三毛猫をおろした。三毛猫は私に擦り寄ってくる。

「……可愛い」

 YOSHIと刻まれていたのは、この子の名前だろうか。

「ヨシ?」

 ためしに呼んでみると、三毛猫はぱっと顔を上げた。まるでそれが自分の名前だとわかっているかのような仕草に、私は感心する。

「君は、ヨシっていうの?」

 みゃ

「ふふ、頭がいいんだね」

 私はくすっと笑って、携帯を手にし、刻まれていた番号を押した。
 数回のコール音の後、

「……もしもし?」

 訝しげな低い男の声が電話に出た。

「もしもし、あの、こんばんは。三毛猫を拾って、首輪にこの番号があったのですけど」
「えっ、本当ですか!?」

 返ってきたのは、驚いたような声だった。

「今日は遅いですし、一日うちで預かりますから、明日の朝迎えに来て上げてください」
「あ、ありがとうございます。俺、さっきからヨシのこと探してたんです……あ、俺、阿東っていいます」
「姫木です。えっと、この子みつけたのは、島田町なんですけど……」
「えっ、島田?!あー、明日どこに迎えに行けばいいですか?」

 さすがに家の住所を教えるのは気が引けたので、近くの公園で待ち合わせをすることにした。

「わかりました。本当にありがとうございます」
「いえ、それでは明日」
「おやすみなさい」
< 6 / 130 >

この作品をシェア

pagetop