三毛猫レクイエム。


「ん……っ」

 誰かに頭を撫でられたような気がして、私は目を開けた。

「あ……ごめん、起こした?」

 ヒロが、私の髪に触れていた。

「……おはよう、気分は?」
「随分良い。真子さんのおかげだ」

 そう言って、目を細めるヒロ。私はその手を取った。

「……怖かった」
「うん?」
「ヒロまでいなくなっちゃうって思ったら、凄く怖くなった」

 私は、息を吐いた。

「あきのことは、忘れられないし、今でも特別に想ってる。だけど、ヒロにそばにいて欲しい。わがままかな?」

 私はわがままだ。
 あきのことを思い続けて、それでもなおヒロと一緒にいようとしているのだから。

「真子さん」
「何?」

 ヒロの穏やかな声が、私の名を呼んだ。

「タキのことを、ずっと想っていて。忘れないでいてやって。真子さんに忘れられたら、タキは悲しいはずだから」
「……ヒロ……」

 ヒロは微笑んで、私の頭を撫でた。

「俺はいつでも真子さんと一緒にいられる。それこそ、一生。だから、真子さんはタキのことを忘れなくていい。俺は、真子さんと一緒にいられるだけで嬉しいから」

 ヒロの優しい言葉に、また涙が出てしまう。それをぬぐったヒロが笑う。
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