この世界の片隅で
『じゃぁ、改めて確認するね!名前は緒方歩美(おがたあゆみ)年齢は17歳。5月8日、16時36分に投身自殺。間違いないよね?』
クロは白いメモ帳に私の情報を書き込んでいる様子
『さぁ、自分が死んだ時間なんて分かる訳ないじゃん』
私は今、地元で一番高いビルの屋上に居る
手すりの向こう側に行って、ギリギリの場所に立っても恐怖はない
だって私、浮いてるんだもん
クロも浮いてるから、やっぱり私達もう人間じゃないんだね
『歩美ちゃんはすごーく自分に無関心なんだね。俺、死神やっててこんなに落ち着いてる人初めて見たよ』
落ち着いてる?私が?
『当たり前じゃん。じゃぁ、慌てたら死神は死んだ命も蘇らせれるって言うの?』
そんなの無理
例え神様だってそんな事出来やしないよ
『どうかな?出来るかもよ?世の中には科学じゃ説明出来ない事が起こるから。こんな俺達みたいにね』
確かに科学が説明出来ないね
死んだ私が自分のお通夜を見てるとか
死神が魂を回収しに来るとか
本当、世の中って怖いくらいあり得ない事が起きるよね