この世界の片隅で




『でもさぁ、あの人君の為に泣いてるよ?』


私が死んで3日、その間に妙な奴に会った


名前はクロ


見た目は普通の人間っぽいけど、本人いわく死神らしい

自殺した人の魂を回収してるんだって


『私、別に逃げないから1人にしてくれない?』


クロは私が行くところ全部に付いてくる

正直うっとうしい


『ねぇ、あの人誰よ?すごく泣いてるね。悲しいんだね』


クロはある人を指差しながら、他人事のように言った

私がせっかく話を反らしたのに、また戻す所がやっぱりうっとうしい





『………お母さんだよ。見れば分かるでしょ』



お母さんは私が死んでから、ずっと泣いている


私の髪を撫でながら

私の手を握りながら


私の名前を呼びながら




『あ、どこ行くの?歩美ちゃん』


クロは犬のように私の後を追ってくる


そんなクロに私はため息をついた



『どこって、あんたがどっか連れてってくれるんでしょ?』



どこでもいい

三途の川でも地獄でも


あの泣き叫ぶ声が聞こえてこない場所ならどこでも





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