愛をくれた神様

焼き肉屋に入ると、裕樹が座っていて手をあげた。

網の上には肉がもう音を立てて焼けている。

「おいしいね~。」

私は言った。肉汁がいっぱいの塩ハラミをかじると、口の中で柔らかくなり、ほっぺたが落ちるくらいのおいしさだった。お腹の子供の事を忘れるくらいおいしかった。

「どんどん食べろよ。」

裕樹は言う。私にではなく隣の恵美にだった。

「…。」

飲みにって、二人でではないのか。私は落胆した。彼はなぜか私と二人では会いたがらない。仕事でいっぱいいっぱいだし、別れてしまおうかとも思った。 だが、彼が引き止めるたび、私は許してしまう。

許すのは簡単だけど、彼と付き合うには、彼が私とのデートに他の女の子を連れてこようが、過去の浮気だろうが、私からお金をかりてかえさまいが、全て許さなければならない。
正直言って、つらかった。

だから、別れたいのに、そのたびに彼が止める。

 どれだけ私の事が好きかとかを散々語り、そして関係は元通り。

自分にも嫌がさしているのだ。

だが、今度ばかりはそうはいかない。私は箸を置き、言った。

「2人で話がしたいんだけど。」


彼は、私を見つめた。その目から笑顔が消え「いつ?。」と聞いてきた。


「今じゃないと困るんだけど…。」


私は言った。
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