愛をくれた神様

僕は好きな女の子を幸せにしてあげたいと思った。

 だが、僕にできる事はなにひとつなく、見守るといっても、まさか家までついていき着替えを覗くわけにもいかず、時々、働く君の様子を病院の待合室に座り覗いていた。

君があまり幸せではない恋愛をしていた事も。
仕事で悩んで泣いていた事も。
それでも最後の最後まで諦めなかった事を、僕は知っている。

だが、僕は、何もしてあげられない。たぶん今ごろ、僕からの君への気持ちが届く頃だと思う。

辛いとき、その僕の気持ちを心のよりどころにしてくれたらな、と思う。

君は、雨の日にしか僕の事を思い出さない。
そしていつか、雨が振っても僕を思い出さなくなる日が来るだろう。
今は、大事にとってくれているハガキもいつか処分されるだろう。

どんなに切ない記憶でも、時間がたてば薄れていくという事を、一度死んだ僕は痛いぐらい知っている。
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