愛をくれた神様


そして、あれから15年がたった。


 私はあれから、地元の学校を出、東京の医療専門学校に進学し、そのまま都内の総合病院に就職した。


社会人になって5年間すごし、25歳になった。


実家には何年も帰っていなかったが、友達の結婚式で帰ることになり、たまたま小学校の前をタクシーで通りかかったときふっ…と、あの事を思い出した。


雨がぽつぽつ…と、車窓を、あおあおとした葉をゆらす。


私は泣いている事に気が付いた。



私は、思い起こすと雨がふるたび、小学校のあのそうじの時間を、あの男の子を、あのひとときを思い出すのだ。


小学校を通っても、同級生の顔を見ても晴れた日は、全く思い出せないのに、雨の時だけあの記憶は私の胸によみがえり、私はむしょうにあの日に帰りたくなるのだった。


雨が上がると、忘れてしまう、雨の日にしか思い出せない10歳の記憶


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