廻音
まさか会話までは聞こえていないだろうけど、どうせなら聞こえる位置に居て欲しかったと思う。

黒雅さんとの今後の約束を、説明しなきゃいけない事がとても億劫だった。

しかし…勢い任せとは言え、あの約束は他の誰でもない、己の口が承諾したものだ。
今更「はい、嘘でしたー」、なんて言えるわけもなくて…。

ゆるりと見上げた空には夏らしい空が、青いキャンバスを白に染めている。
眩し過ぎる太陽が肌に痛くて、直ぐに顔を下げる。

隣では來玖さんが何でもない風を装いながら、報告を待ち侘びているのが隠し切れていない。
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