廻音
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言葉も出ずに息だけを吐いて、ベンチに深くもたれ掛かる。

次に隣に腰を下ろす影を、直接見ずとも、影の持ち主は判っていた。

「疲れたよ。というかヒットポイントがだだ下がりだ。
木の下のくせに影が無くなっていくんだ。」

「移動すれば良かったじゃないですか。」

「ベストポジションだったんだ。」

「私にバレる為の?」

視線を逸らす來玖さんは、苦笑いをして頭を掻いた。
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