廻音
これから姉の部屋に辿り着いたところで談笑しようなんて気は枯れてしまい、そのまま別々の道に歩き出した。

背中に姉の足音は聴こえない。
そっと振り返り、その姿を盗み見た。

何かを掴む様に力なく前方に出された掌が、しかし何も手に入れる事は出来ず、力なく宙に漂う。

何を、期待しているの。
召喚術なんて有りもしないのに。

焦燥感に堪えきれず、力強くアスファルトを踏みしめた。
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