廻音
「りんちゃん、元気だった?」

耳元で囁きながら、ソフトクリームをぺろりと舐める様に耳朶を愛でられる。

「欲望に素直だね。本当に…あなたって人は。」

満足した風にニコニコと笑顔を向けながら、私の前髪にそっと触れる指先があった。

「りんちゃん」とは、姉、輪廻の事だ。
來玖さん、姉、私の三人でお茶をする事がある。
決まって私の部屋で、になるのだが、開催地が変わる事は、まぁ無いと思う。

事前の連絡無しで姉が私の部屋に訪れた場合、こういう事になるのだ。
つまり彼がこの部屋に入り浸り過ぎているという事。

「りんちゃんなら二人の世界への侵入を許可するよ。」

彼の決まり文句である。

「本当は何者にも邪魔されたくない。
外界との関わりをすべて断ち切ったとしても後悔する事など有り得ないよ。
廻音以外欲しいものなんてないからね。
だけど廻音の大切なお姉ちゃんだから。
それは俺にとっても大切だ。」

上から目線の彼の台詞にも嫌な顔一つせず、
「愛だね。」と笑える姉も何かに毒されているのではなかろうか。

反論しない私もまた然り。
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