廻音
私は今、面会室の前に居る。
此処に来て、面会は初めての事だ。
両親さえ来ない。
当然だろう。

ドアノブを捻ると冷んやりして、夏の日からの時間を想った。

夏でも冬でも温かかった來玖さんの手。

あなたにだけ、後悔しちゃうよ。

「早く。時間は決まってるのよ。」

後ろから急かされて、溜息を漏らしドアを開ける。
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