廻音
「…柚子姫ちゃん。春陽さん。」

「廻音ちゃん!」

バンッと伸ばした柚子姫ちゃんの掌を、二人の間の壁が拒絶する。

悔しそうに唇を噛んで、柚子姫ちゃんは腰を下ろした。

「廻音ちゃん。ちゃんと御飯食べてる?
駄目だよ。どんな状況だって、ちゃんと食べなきゃ。
また痩せたんじゃない?元々細っこい躰が…もう…心配かけさせないでよね。」

柚子姫ちゃんは随分無理をして笑った。

「廻音ちゃん。君なら大丈夫だって信じてる。
絶対にまた俺たちの所に戻っておいで。
ずっと待ってるから。」

どこまでも優しい、なんて強い人達なんだろう。

なのに私、涙も出ないのよ。


ねぇ、一体何が「大丈夫」なの。
< 207 / 213 >

この作品をシェア

pagetop