廻音
一度、姉に訊いた事がある。

「法学部卒のお姉ちゃんが何故、就職を喫茶店に決めたのか」、と。

「運命って本当に、どういう風に繋がっていくか判らないものよ。
何気ない毎日だって必ず未来に繋がっているでしょ。
一瞬一瞬の選択が取り返しのつかないものになったり、かけがえのないものになったり。

『来世こそは』なんてもう後悔したくない。今生で誰よりも幸福になってやるの。
その結果が今の私ってわけ。

どれだけの高学歴を持って、世間を黙らせる程の一流企業に就いて、何割の人が生き甲斐を持って遣り甲斐を感じているかしら。

私は私が選んだ道が、今の未来で本当に満足よ。
とても恵まれているわ。
負け犬の遠吠えだと笑いたければ笑えばいい。

この環境を私は愛しているもの。」

一息に語り、姉は息を吐いて、それから随分と苦労をして、にっこりと笑った。
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