廻音
浴室を出て、異変に気付く。
お風呂に入る前に、確かに脱衣場まで持ち込んだ筈のバスタオル。
蓋を閉めた状態の洗濯機の上に置いた筈だ。
いや、「置いた筈」ではない。
絶対に、置いたのに。
裸のまま突っ立って思考を巡らしながら、ふと足下に目をやると、これまた日常には無い事に気が付いた。
転々と一定の距離に置かれた何枚かのバスマットとフェイスタオル。
ヘンゼルとグレーテルの目印パンみたいに、辿って来いとでも言いたげに並べられていた。
何となく気付いた事は、「床を濡らさないように、この上を歩いておいで」、という事なのだろう。
この遊びなのか本気なのか判らない事に付き合うべきか思案した結果、私の中に選択肢など生まれず、躰を拭かない事には夏であっても抵抗があるし、床を濡らしてしまう為に、
「この上を歩いていく」一択しか無かった。
あいつは…一体何を考えているんだ。
お風呂に入る前に、確かに脱衣場まで持ち込んだ筈のバスタオル。
蓋を閉めた状態の洗濯機の上に置いた筈だ。
いや、「置いた筈」ではない。
絶対に、置いたのに。
裸のまま突っ立って思考を巡らしながら、ふと足下に目をやると、これまた日常には無い事に気が付いた。
転々と一定の距離に置かれた何枚かのバスマットとフェイスタオル。
ヘンゼルとグレーテルの目印パンみたいに、辿って来いとでも言いたげに並べられていた。
何となく気付いた事は、「床を濡らさないように、この上を歩いておいで」、という事なのだろう。
この遊びなのか本気なのか判らない事に付き合うべきか思案した結果、私の中に選択肢など生まれず、躰を拭かない事には夏であっても抵抗があるし、床を濡らしてしまう為に、
「この上を歩いていく」一択しか無かった。
あいつは…一体何を考えているんだ。