廻音
リビングのドアに手を伸ばし持ち手を捻り内側に押し開ける。

「良く出来ました」と不敵に微笑みながらバスタオルを拡げる彼が居た。

「なん…何なの一体!」

私の怒りを目の当たりにしても來玖さんはちっとも怯まない。
それどころか一層黒い笑顔で近付いて来る。

私に歩み寄り、「風邪引くよ」とバスタオルで包み込む。
こうしたのはお前だと言いたい。

壊れ物を扱う様にフワリ、フワリとやられ、何故か額には、キスの嵐だ。
くすぐったくて何とも言えない気分。

バスタオルが床に落ちる音を聞いた。
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