蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



父はにこやかな顔で言う。

……どうやら外堀は確実に埋まっているらしい。


木葉はなんとも言えない顔で父を見た。

父にしてみれば、圭斗は幼い頃から見知った甥だ。

しかも医者で性格は真面目、面倒見もよく、木葉も昔から圭斗に懐いていた。

親として反対する理由は全くない。


『でないとあっという間に結婚して、子供作って、孫の顔見るハメになるわよ』


凛花の言葉が脳裏に蘇る。

――――なんだかそんな気がしてきた。


無言の木葉に、父は続ける。


「由弦ともさっき、その話をしてたんだがな。さっき帰った」

「え、そうなんですか?」

「彼女と一緒に来てたみたいでな。5分も話さずに帰ったよ」


父は窓の外を見下ろし、言う。

木葉は驚き眉を上げた。

由弦が彼女を連れて病院に来るとは……。


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