蜜色トライアングル ~String of origin

2.止められない嫉妬




「なんで、出ねぇんだ?」


由弦は忌々しげに携帯を閉じた。


――――花壱のカウンターの中。

22時を回り、上がる支度をしていた由弦は、木葉から全く連絡がないことに苛立ちを募らせていた。

今日は22時過ぎに帰るとメールしたのだが……。


いつもなら必ず、木葉から短いながらも返事があった。

この頃はあまり木葉と話していないが、必要な連絡はしなければならない。

そして由弦はその返事で、木葉が家にいることを確認していた。

……圭斗と一緒に居るわけではない。

そう安堵する自分がいた。


しかし、今日は……。

19時過ぎからメールすること5本、電話を掛けること3回。

けれどまだ木葉から返事はない。


「くそっ……」


あの時の二人の姿が脳裏に浮かぶ。

街灯の下で仲睦まじそうに話していた木葉と圭斗。

あの時の二人の姿を思い出すと、黒い嫉妬が胸に広がる。


――――諦めなければならないと、わかっている。


圭斗は大人だ。

しかも医者で、一人前の社会人だ。

学生の由弦とは全く違う。

木葉が惹かれるのも無理はない。

しかし……。


< 7 / 122 >

この作品をシェア

pagetop