蜜色トライアングル ~Winter Blue
10分後。
二人は大通りの脇にあるオープンガーデンの喫茶店にいた。
ライトアップされた観葉植物が仄暗い中に美しく映え、店内の所々に置かれたガラスの明かりが瀟洒な雰囲気を漂わせている。
「で。……あれから、何があったのかしら?」
「……」
馨は運ばれてきたコーヒーを一口飲み、優雅な所作でソーサーに置いた。
……コーヒーカップに付いた口紅の跡。
冬青はそれをじっと眺めながら、静かに口を開いた。
「……ひとつ、聞きたい」
「あら、何かしら?」
「あのメール。インペリアルタワーの42階。あれは……あんたか?」
問いかけというよりは確信だ。
冬青の言葉に、馨はくすっと笑った。
「そう。冬青さんからとっくに分かってると思ったけど?」
「念のため確認しただけだ。しかし、なぜあんなことをした?」
あの夜が、冬青と木葉の運命を変えたと言っても過言ではない。
冬青は静かな瞳でじっと馨を見据える。
馨は少し笑い、長い黒髪を背の後ろに払った。