蜜色トライアングル ~Winter Blue
冬青は木葉の頭に手を置き、そっと撫でた。
できるだけ冷静な声で、諭すように言う。
「俺はどこにも行かない。お前が望むなら、傍にいる」
「……え?」
「お前が兄として接してほしいなら、そうする。……お前は、俺にどうしてほしい?」
冬青の言葉に木葉は息を飲んだ。
その黒い瞳でじっと冬青を見つめ、乾きかけた唇を開く。
「ホント……に?」
「……木葉……」
「じゃあ、もし私が……ずっと、一生傍にいてって言ったら、いてくれるの?」
「……っ」
「結婚しないで、一生私の傍にいて、って言っても!?」
木葉は錯乱した様子で叫んだ。
冬青は木葉の言葉に凍りついた。
木葉は恐らく自分が何を言っているのかわかっていないのだろう。
自分と兄妹ではないと分かった衝撃で不安になっているだけだ。
母を幼い頃に亡くしたせいか、木葉は昔から心の奥底に寂しさを抱えていた。
薬の力で不安が増殖し、手近な人間に縋らずにはいられないのだろう。
と、思っても……。
――――もしそれを木葉が本気で望むなら、自分は一生木葉の傍に居るだろう。