エトセトラエトセトラ




僕の恋人は待ち合わせに一度も遅れたことがない。

いつでもどんなときでも、彼女は待ち合わせ時間きっかりにその場に現れる。もちろん僕が待ち合わせ時間より早くその場に着けば彼女は居ないわけだが、それは遅れたことにはならないだろう。彼女は約束時間を一分も違えていないのだから。

理由を訊いたことがある。どうしてそんなに時間に正確なのか、と。
すると彼女はにっこり笑ってポケットから、鞄から、色々なところからぞろぞろと時計を取り出して言った。これのおかげよ、と。

確かに、腕時計を二つも三つも着けていたり、それなのに首から懐中時計をぶら下げていたりと少し不思議な人ではあった。
しかしそんな彼女が好きで僕は交際を申し出たわけだし、時間に神経質なくらい正確なところも、彼女の長所として受け止めていた。

そんな僕達が恋人として一緒に居ることがごく当然のこととなりつつあったとき。
彼女は見慣れない時計を持って僕の家へ遊びに来た。



< 24 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop